アクリルアミド

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 「アスパラギン」というアミノ酸と、「ブドウ糖」や「果糖」などの還元糖が一緒に含まれている食品を、揚げる、焼くなど120℃以上に加熱するとメイラード反応を起こして、アクリルアミドという物質が生じます。

 国際がん研究機関は、アクリルアミドを「ヒトに対しておそらく発がん性がある物質(グループ2A)」と分類しています。“おそらく発がん性がある”と分類されている理由は、ヒトにおいてアクリルアミドが発がん性を持つという十分な証拠は得られていないものの、動物試験における十分な証拠があること、加えてアクリルアミドとグリシドアミドがDNA及びヘモグロビンと結合することが報告されていること、さらに各種遺伝毒性試験の多くでアクリルアミド及びグリシドアミドが陽性であることから、ヒトでも発がんが起こる確率が極めて高いと考えられるからです。

 2007年にHogervorstらが報告したオランダの疫学調査結果では、アクリルアミドの摂取量が多いと発がんリスクが増加することが初めて示されました。この疫学調査では、55~69歳の女性62000人以上の中から無作為に抽出した約2500人の女性を、約11年間追跡調査したところ、子宮内膜がんが327症例、卵巣がんが300症例、乳がんが1835症例観察されました。調査対象者を喫煙者と非喫煙者に分けて、それぞれを食品からのアクリルアミド摂取量によって4つの集団に分けた場合、特に非喫煙者の場合には、アクリルアミドの摂取量が最も多い集団(全体の上位25%)では、最も少ない集団(全体の下位25%)に比べて、子宮内膜がんと卵巣がんの発症例が約2倍となっており、それらのリスクが有意に高いことがわかりました。なお、アクリルアミドの摂取量によって、乳がんのリスクに有意な差は観察されませんでした。

(以上農林水産省ホームページより)

 そこで、実際に加工食品中どの程度アクリルアミドが含まれているか見てみると・・・

最大値と最小値(単位はμg/kg)

 
国立衛研
海外5カ国
ポテトチップス
467~3,544
170~2,287
フレンチフライ
512~ 784
<50~3,500
ビスケット、クラッカー
53~ 302
<30~3,200
朝食用シリアル
113~ 122
<30~1,346
とうもろこしチップス類
117~ 535
34~ 416
食パン、ロールパン
<9~ <30
<30~ 162
チョコレートパウダー
104~ 141
<50~ 100
コーヒーパウダー
151~ 231
170~ 230
ビール
<3
<30

(厚生労働省ホームページより)

 このように加工食品の中でもばらつきがあります。

 アクリルアミドができるのは、加工食品ばかりではありません。ご家庭の調理によっても生じます。そこでアクリルアミドを少しでも減らすために調理法を見直しましょう。

1.適切な原材料を選択すること

加熱によってアクリルアミドに変化する食品成分の含有量は、野菜や穀物の種類によって異なります。また、作物の品種によってもそれらの含有量が異なります。そのため、アクリルアミドに変化する食品成分(具体的にはアスパラギンというアミノ酸とブドウ糖、果糖)が少ない原材料を選ぶと、加熱したときにできるアクリルアミドを少なくできる可能性があります。また、アクリルアミドができやすい食品として知られているじゃがいもは、低温で保存するとアクリルアミドができる原因となる食品成分のひとつであるブドウ糖と果糖が増えてしまいます。そのため、低温で長期貯蔵されたじゃがいもを、例えばフライドポテトのような高温調理に使用することは避けるべきです。このように、適切な品種を選択することや適切に保存された原材料を使用することで、アクリルアミドを低減できる可能性があります。

2.原材料の配合比率や組成を見直すこと

アクリルアミドは、食品原材料に含まれている食品成分(具体的にはアスパラギンというアミノ酸とブドウ糖、果糖)が高温での加熱で変化してできることが知られています。食品のレシピを見直して、それらの食品成分の比率を減らすことができないか検討してみましょう。例えば、小麦粉と米粉では、米粉の方がアスパラギン濃度が少ないため、小麦粉の一部を米粉に置き換えることでアクリルアミドを低減できる可能性があります。使用する糖類を、ブドウ糖や果糖からショ糖に替えることでもアクリルアミドを低減できる可能性があります。

3.調理加工条件、特に加熱条件を見直すこと

アクリルアミドは、食品を高温で加熱することによってできるため、加熱していない生の食品には含まれていません。そのため、アクリルアミドが少なくなるように、加熱時間、加熱温度を検討し、最適な条件を設定します。「焼く」、「揚げる」、「炒める」、「焙る」などの方法ではアクリルアミドができやすく、一方で「煮る」、「茹でる」などの方法ではアクリルアミドができにくいことが知られています。アクリルアミドは、食品中の水分が少なく、かつ、高温で加熱した場合に最もできやすくなりますので、食品を加熱しすぎないことが何よりも重要です。また、調理するときの食品の大きさや形状は、加熱時における食品内部の温度上昇に影響します。食品を加熱前に水にさらしておくことや下ゆですることは、食品の水分含有量を増やし、アクリルアミドの原因となる水溶性の食品成分の量を減らす効果があります。このように、加熱条件そのものだけでなく、加熱前の加工条件も、加熱によってできるアクリルアミド濃度に影響します。

(1~3:農林水産省ホームページより)

 昔の日本ではあまりじゃがいもを揚げて食べることはなかったのではないでしょうか?煮たり、蒸したりして食べていたのではないでしょうか?安全な食べ方を昔の日本人はしていたのですね。じゃがいもの他にも、もやし、アスパラガス、かぼちゃ、りんごなどはアスパラギンを多く含みます。りんごとハチミツを一緒混ぜて高温で加熱することは避けた方がいいでしょう。また現在販売されている食パンの中には果糖・ブドウ糖液糖が使われている物もあります。それをご家庭でトーストにするとアクリルアミドがより多くできることになります。

 さらに乳糖も還元力のある糖です。したがってアスパラギンを多く含む食材に牛乳を混ぜて高温に加熱することも避けた方が良いでしょう。

 現在がんがこれほどまでに増えているのは、もちろんアクリルアミドの他にもたくさんの原因がありますが、食事の欧米化を無視することはできないと思います。

 もう一度この機会に「和食・・・とりわけ古来より食べ続けられた日本の伝統食」を見直してみようではありませんか。